マキ屋紅こうじ MAKIYA'S BENIKOUJI
紅麹コラム 紅麹コラム

人々の願いが込められた、紅麹の特長と魅力

紅麹コラム

健康素材
としての
紅麹

紅麹は、中国から伝わった非常に独特で特長的な麹菌です。発酵することで紅い色素成分を生み出し、うま味成分や甘い香りをつくり出します。その特徴より古くから、健康維持に役立つ食材として注目されてきました。

  1. 日本では珍しい麹菌

    麹菌といえば、日本では清酒や味噌、しょうゆに使用されるアスペルギルス属のカビが一般的です。最近は「塩こうじ」として料理にも使われるようになりました。沖縄の伝統的なお酒である泡盛も同じ仲間の麹菌でつくられます。麹菌には食材に含まれるでんぷんやタンパク質に作用して、甘味(糖)やうま味(アミノ酸)をつくり出す働きがあります。味噌や清酒をつくる麹菌は黄麹菌、泡盛をつくる麹菌は黒麹菌と呼ばれますが、どちらも分類としてはアスペルギルス属に属する微生物です。
    このような“麹文化”の中で、ひときわ異彩を放つのが紅麹菌です。名前のとおり鮮やかな紅い色素をつくり出します。この色素は古くから食品の色づけに利用され、現代でも紅麹菌由来の着色料が加工食品に利用されています。

    紅麹菌は、一般的な麹菌と同じように、甘味やうま味をつくり出す酵素を持っていますが、琉球大学による豆腐ようの熟成に関する研究から、紅麹菌には効率良くうま味成分(アミノ酸)をつくり出す力があることがわかっています。また、お米に増殖するときに華やかな甘い香りを醸し出すことも紅麹菌だけが持つ特長で、「紅濱の唐芙蓉(とうふよう)」や「紅麹あまざけ」なども、独特な紅麹製品ならではの特長を持っています。
    実は、紅麹菌は日本で普及している麹菌とは分類学上も異なっており、モナスカス属に分類される発酵菌。モナスカス属は中国でよく利用されているカビの一種であり、古くから中国との交流が盛んであった琉球・沖縄に伝承されてきた食用微生物です。

  2. 伝統と科学に注目された発酵食材

    紅麹は体に良い食材として、中国の本草学の古書「本草網目」(李時診、1590年)に「消食活血、健脾燥胃」(消化を助け、血の巡りを良しく、内臓を健やかにする)や、1832年に琉球王朝の宮廷医・渡嘉敷通寛によって編纂された「御膳本草」にも記述が見られます。
    古くからその価値が認められ重宝されてきた紅麹は、現代においても科学的に注目されるようになりました。

    メタボリックシンドロームの一要素である高コレステロール血症の治療薬として、現在ロバスタチンという医薬品成分が実用化されています。そのきっかけは、モナコリンKという体内のコレステロール合成を阻害する物質を紅麹菌の一種が生産するという、日本の研究者(遠藤章博士)らによる発見でした。
    また、紅麹菌はギャバ(GABA、γ‐アミノ酪酸)というアミノ酸の一種をつくり出すことも知られています。ギャバは人間の体内でもつくられる物質で、中枢神経の興奮を抑え血圧を下げたりリラックス効果をもたらす働きがあることが報告されています。
    このような科学的な研究により、紅麹は健康維持に役立つ食材として注目を集めています。

    (お断り)
    上記は紅麹菌に関する知識の提供として、古書や学術文献等に基づいて紅麹菌に関する情報をまとめたものです。マキ屋フーズが使用している紅麹菌はモナコリンKやギャバを生産しますが、特定保健用食品や機能性表示食品であることを表示していない限り、個々の商品がこれらの成分が持つ機能を維持していることは実証されておりません。また、そのような目的で提供する商品ではありません。

  3. マキ屋フーズの紅麹利用の考え方

    医食同源という言葉が示すように、健康維持の基本は食事にあるとマキ屋フーズは考えています。バランスの良い組み合わせの食事を心掛け、種々の食材や料理の味・香り・彩りを楽しむことで、それぞれの食材から栄養素や機能性成分を少しずつ分けていただく。これが医食同源の本来の意味であり、“マキ屋の紅麹”を健康的な食生活を彩る素材の1つとして、さまざまな形で皆さまの食卓に提案していきます。

    ※カビ毒に関する一部の報告について
    紅麹菌の一種にシトリニンというカビ毒が含まれることが報告されていますが、弊社が自家培養している紅麹菌はシトリニンを生産しないことを成分分析により確認しています。

    <参考文献>

    1. 金城、瀬底、安田、他「食用天然色素の開発:紅麹菌における色素生産」南方資源利用技術研究会 ニュースレター (21), 28-29, 1990
    2. 安田正昭「豆腐ようの熟成と紅麹菌のプロテアーゼ」食品酵素化学の最新技術と応用-フードプロテオミクスへの展望- 2004、シーエムシー出版
    3. 西谷、稲垣「健康維持・補完代替医療素材としての紅麹」日本補完代替医療学会誌 第6巻 第2号 45-51(2009)
    4. 『御膳本草』阪巻・宝玲文庫(ハワイ大学所蔵)HW736
    5. 遠藤章ウェブサイト>スタチンの発見と開発
    6. 山本一弘「ギャバの機能特性と健康志向食品への展開」日本食品機械研究会誌 26 (1), 34-39, 2006
    7. 食品安全委員会2019年11月14日付「欧州連合(EU)、モナスクスの紅麹由来の食品サプリメント中のかび毒シトリニンの基準値の改正を公表」

沖縄に伝わった
紅麹と
豆腐ようの
起源

豆腐ようは沖縄以外ではほとんど見られない豆腐の発酵食品で、琉球王朝時代の18世紀頃に中国から渡来した紅腐乳を琉球王府のお料理座で改良したものと考えられています。ただ、当時の腐乳は塩辛く、匂いがきつく、味も濃厚でクセがあり、そのままでは受け入れられなかったそう。それを琉球王朝お抱えの料理人たちが、沖縄の気候、風土、食嗜好に合うように泡盛を利用することで、減塩と長期保存に成功。さらに、紅麹菌の発酵作用によりマイルドな風味に改良するなどの工夫を凝らしてエレガントな食品に仕立て上げ、「豆腐よう」と命名しました。
当時、豆腐はぜいたく品であり、原料の泡盛も紅麹も庶民には手に入らない貴重品でした。製造方法も秘伝中の秘伝で、まさに王侯貴族だけの“幻の食べ物”でした。
ちなみに豆腐ようには、紅麹(中国由来)、黄麹(日本由来)、泡盛(タイ、中世ヨーロッパ、琉球)、豆腐(東南アジア、東アジア)、食塩(海洋)が使われ、まさしく“万国津梁”の象徴のような沖縄の珍味です。

<参考文献>
安田正昭「沖縄の伝統発酵食品-豆腐ようの歴史、発酵と機能性」Mycotoxins 63(1),67-72(2013)

マキ屋紅こうじ MAKIYA'S BENIKOUJI
マキ屋紅こうじ MAKIYA'S BENIKOUJI

沖縄再興への
誓いが込められた
紅麹菌

1980年代に安田正昭教授(現・琉球大学名誉教授)が紅麹菌の培養に成功し、民間企業への技術移転が実現した紅麹の培養技術。実はこの取組は、研究者だけではなく沖編経済界のリーダーが深くかかわり、「沖縄に産業を」という戦後の沖縄再興への切なる思いが込められています。

紅麹菌事業の礎を築いた
琉球セメント創業者の決意

戦後、「沖縄財界四天王」と呼ばれる4人の著名な経営者の1人に、宮城仁四郎(1902~1997)という方がいらっしゃいます。沖縄機械製塩(昭和23年)、大東糖業(昭和25年)、琉球セメント(昭和34年)、その他パイナップル加工業、畜産加工業、たばこ製造業など20社を設立し、琉展会という企業グループを形成したほか、琉球工業連合会、沖縄県経営者協会などの会長職を歴任した人物です。
仁四郎氏は大宜味村に生まれ。沖縄県立農学校から鹿児島高等農林学校(現・鹿児島大学農学部)の農芸化学科に進学して専門教育を受けました。
数多くの農産加工業を立ち上げた仁四郎氏は、沖縄の地域的特性を生かした農業と製造業によって沖縄の未来を切り拓くという、1人の技術者・起業家として決意を抱いていました。

紅麹菌培養技術で
豆腐ようを製造&事業化へ

琉展会の中核企業である琉球セメントで、創業者仁四郎氏の意志を受け継いだ故・濱元栄吉氏も農学を学んだ経営者でした。濱元社長の指揮下で、琉球セメントはバイオ関連事業の開発に乗り出します。そして、いくつか挑戦したプロジェクトのうち、紅麹菌の培養とそれを用いた“豆腐よう”の事業化を成し遂げました。これは琉球秘伝の宮廷発酵食品“豆腐よう”の熟成機構を解明した、琉球大学農学部・安田正昭名誉教授からの技術移転によるものです。この事業は経営者として開発を推進した濱元氏にちなんで“紅濱”というブランド名がつけられました。

安田教授の教えを胸に
紅麹菌の培養技術を継続的に追究

当時、琉球セメントに1人の技術者として所属していたマキ屋フーズの創業者・金城正直は、琉球大学時代の恩師である安田教授のもとで紅麹菌の培養技術を研究し、「紅濱の唐芙蓉(とうふよう)」などの商品開発に成功。独立後に立ち上げたマキ屋フーズにおいても、紅麹菌の培養技術を追究しながら、地元食材を紅麹で発酵させて「新しいおいしさを引き出す」チャレンジを日々続けています。

紅麹菌の培養技術を確立した

安田正昭教授のコメント

琉球王朝時代から医食同源の考えとともに育まれてきた紅麹菌の培養技術を確立したのは、「沖縄の伝統的な食文化を途絶えさせてはいけない」という使命感からでした。マキ屋フーズがその技術を受け継ぎ、伝統とバイオテクノロジーの結晶である紅麹を通して、沖縄の食の魅力を広く伝えていただきたいと思います。